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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【自主企画】『クラシック温故創新』…歴史を紡ぐこと【2020.6.27】

更新日:2020年3月23日

 お待たせしました。情報解禁です。



Állati kettös (野中拓人×榎本智史) presents


『クラシック温故創新』


2020年6月27日(土)

17:30開場 18:00開演

@武蔵小杉サロンホール

一般 3,000円 学生以下 2,000円

プログラム

レイハ:36のフーガ Op.36 より

フランク:前奏曲、コラールとフーガ

バルトーク:組曲 Op.14

ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第4番

野中拓人:バラード第1番『ジェヴォーダンの獣』

榎本智史:(新曲初演)

予約申込

virtuoso3104@gmail.com (榎本)

または当HPのContactフォームより

 

 以前、話題になった意見があります。


「自分の書きたいように音楽を書けばいい。歴史に挑戦することなんて考えなくていい」


 今自分が書きたい音楽を書きたいように書けばいい。それが音楽史上においてどのような意義をもつのかは問題ではないということでした。この意見には賛否両論ありました。


 

 クラシック音楽の歴史上には色々な作曲家が存在しました。彼らはそれぞれに独自の音楽表現を追求していて、その成果が作品という形で今日に残っているのであります。そしてその集積が音楽史となり、後世の人々はそれを参照することができます。

 ベートーヴェンやシェーンベルクが何を考えてどんな音楽を作り、それが音楽史上でどのような意義を果たしたのか。この観点について重視する音楽家、重視しない音楽家と両者存在すると思います。その是非はおいておくとして、僕は前者です。クラシックの歴史上の作曲家たちに関しては、ほぼ例外なく先に生きていた別の作曲家に何らかの影響を受けて作曲のアイデアとしているからです。

 例えば僕の研究するシェーンベルクなんかは本当に「バッハがこれをやってモーツァルトがこれをやってベートーヴェンがこれをやってブラームスがこれをやってヴァーグナーがこれをやってマーラーがこれをやったからさて自分は何をしようか!」みたいな創作姿勢なのですよね。先に生きていた作曲家たちの作品がこういう意義をもって書かれてきたから、自分はその末裔としてどういう作品を書くことによって意義を残すか、ということなのです。その行いが即ち “歴史を紡ぐ” ということなのかもしれませんが。


 

 今回用意したプログラムには共通点があります。

 それは「過去の様式を借りながら新しいアイデアを投入した作品」であるということ。


 まずレイハ(またはライヒャ、ライシャ)という作曲家。この人はチェコ出身で、ドイツを経てフランスに渡り、作曲家というよりも名教師として名を馳せました。生まれた年は1770年、つまり今年は生誕250年にして、ベートーヴェンと同い年である…どころか、なんとベートーヴェンとはお友達。ベートーヴェンの故郷であるボンにおいてベートーヴェンと出会い、しかもウィーンで再会し一緒にハイドンに師事、後にパリ音楽院の作曲科教授となってベルリオーズやリスト、更にフランクまでもが彼の門下生。なにこの知名度低いキーパーソン。この人の書いた《36のフーガ》Op.36 は、それまでの伝統的なフーガの書法を打ち破る斬新なフーガの実験集となっています。


 そしてその弟子フランク。オルガニストとしてフランスで活躍した彼の作風はヴァーグナーの影響を受けたドイツ音楽寄り。一つのテーマが複数の楽章に出現することによって作品全体の統一を図る循環形式の使い手でもあります。《前奏曲、コラールとフーガ》はその作品の中でも人気の高い作品でありますが、「前奏曲とフーガ」の間に「コラール」が挟まっていると言われると、どこぞのJ.S.バッハ御大を思い起こしますね。


 時代は近代へ突入して、ハンガリー最大の作曲家 バルトークの《組曲》Op.14 は、民謡のはもちろん、古典派以前の音楽も熱心に研究していたバルトークならではの作品。古典的な形式と民俗音楽の要素がミックスされています。採り入れた民俗音楽要素はハンガリーのものに限らず、この作品では第3楽章にアラブ系音楽の影響を受けた旋律を聴くことができます。


 そしてほぼ同時代に、遠く離れた南米はブラジルの地に作曲家が一人。その名もヴィラ=ロボス。「ブラジルにクラシックなんかあるの?」と思われそうですが、意外にいるのです。彼はクラシックを学ぶ一方でブラジルの民謡採集にも出かけているという、なんだかそれこそバルトークと似たようなことをやっていた人でもあります。《ブラジル風バッハ第4番》は、もれなくバッハの音楽の要素とブラジル音楽の要素をミックスしてしまったという、なかなか他の作曲家には真似できない作品となっています。


 これらのように、作曲家たちが温故知新…いや、温故創新として生み出した音楽を前半プログラムとしまして、後半には野中拓人、榎本智史それぞれによる新作初演を行います。テーマは「温故創新」ですから、旧来の音楽の要素に新しいアイデアを足すというコンセプトで作ります。野中くんの方はもう既に完成しているので、あとは僕が本番に間に合うように曲を書けばいいんだなと…!(なんとまだ1音も書いていません)


 

 書きたいものを書く…という姿勢は構わないのですが、どう足掻いても歴史と比べられることを逃れられはしません。既に音楽史上に輝いている作品の二番煎じを作ったところで、その作品は過去を超えることができないのです。意外にも、「書きたいものを書く」と宣う人ほどそちらに陥りやすいものでして、むしろ過去の作品をきちんと勉強し、さらにそこに新しいアイデアを投入した作品の方が、過去の作品を超えられる可能性は大きいでしょう。事実、クラシック音楽史上の作曲家たちはそうやって先人を超えようとしてきたはずなのです。作曲家たちの温故創新・大逆転アイデアの一端に触れる機会になればいいなと思います。


 

 6月末の開催のため、新型コロナウィルスがどのようになっているか分かりませんので、現時点ではご来場時の注意事項などは載せておりませんが、開催が近づいた頃にマスク着用や予約必須などのルールを設定するかもしれません。ご了承ください。

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