2022年7月23日
14:30開場 14:40開演
及川音楽事務所フレッシュガラコンサート
会場
としま区民センター大ホール
(最寄り駅:池袋)
入場料
2,000円 全席自由
曲目
リセンコ《不安》
リセンコ《1902年の夏のアルバム》Op.41
他
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当ホームページCONTACTより
7月は久しぶりに大きなホールでソロを弾くことになりました。池袋のど真ん中にあるとしま区民センターです。小ホールと大ホールとありますが、今回は大ホールの方です。出演者もいつもと比べて多め、プログラムも非常に充実していると思います。
僕自身のプログラムについてのみちょっとした解説を書いておきます…とは言っても、詳しい資料が手元にあるわけでもないのですが…
今月(6月)にも同様にリセンコの作品を弾きましたが、そのラインナップは《3つのエスキース》と《ドリア旋法のエスキース》という、いずれもウクライナの民族色が強い短い小品でした。
来月(7月)に弾くのは、どちらかと言えばリセンコがロマン派を背景に持っていることが窺える2作品です。彼は確かに民族音楽研究者としてウクライナの民族音楽を研究し、それを作品に反映させていました。しかしその一方で、ロマン派の伝統を継承するピアニストでもありました。
ピアニストとしては特にショパンのピアノ作品に影響を受けています。なるほど、今月弾いた時にもそのような感覚はありました。まあ、ショパンに影響を受けたにしては音が分厚いのも事実でありまして、リストやアントン・ルビンシテインなんかも参考になっているのかもしれません。ピアノのための2曲の《ウクライナ狂詩曲》など、リストの《ハンガリー狂詩曲》と同じような構成では?とも思ったりします。
今回僕がまず弾くのは、遺作の小品《不安》です。鬱々とした雰囲気を纏ってはいるものの、逡巡するようなメロディが美しい作品となっています。比較的捻りもなくシンプルに書けてしまったので、曲集などに組み込むのが躊躇われた結果、後から発掘されて遺作になってしまったのかもしれません。1899年から1901年頃に作曲されたと推定されています。
そしてその後に弾くメインのプログラムである曲集が《1902年の夏のアルバム》Op.41です。リセンコは似たような名前の曲集を3つ残しております。すなわち、《1900年の夏のアルバム》Op.37、《1901年の夏のアルバム》Op.39、《1902年の夏のアルバム》Op.41です。1年ごとの夏に小品集をまとめていた3年間の、3年目の曲集が今回弾くものです。なぜ《1902年の~》を選んだのかと言えば、楽譜が手に入ったのがこれだけだったからです。PDFのダウンロード販売でいいから手に入るようになってほしいですね…全部買いますよ…
《1902年の夏のアルバム》Op.41の内容は以下の通り。
Ⅰ. 怠惰と待望
Ⅱ. 幸福な一日の印象
Ⅲ. 悲歌
1曲目と3曲目は人気が高く、特に3曲目『悲歌』はそれこそロシアによるウクライナ侵攻を受けて、最近弾く人がさらに増えたような曲です。一方で2曲目は影薄く、もしかするとCDの類いは日本国内では手に入らないのでは?と思われます。
アメリカのピアニスト アーサー・グリーン(Arthur Greene)が、リセンコのピアノ曲の中で主なものを既に録音して世に出しているのですが、あろうことか《1900年の~》から《1902年の~》までの3つの曲集からは数曲が抜粋で収録されており、残りはまだ出ていないようです。《1902年の夏のアルバム》が全曲通しで聴けるという機会は意外とまだ他に無いかもしれません。
曲の内容はどうかと言いますと、雰囲気は気怠さと哀愁を5割増ししたショパンとでも言えばそれに近いでしょうか。しかし細部では民族的にドリア旋法を用いたり、チャイコフスキーが好みそうな和音を持ってきたり、初期ロマン派にはあり得なかったような入り組んだ和声進行を見せる瞬間もあります。
随時YouTubeショートやInstagram、Twitterあたりで1分程度の試聴動画を上げていくつもりでいますので、
ぜひ興味を持っていただいて、会場に足を運んでいただけたら嬉しいです。
ちなみに7/23のコンサートは、狙ったわけでもないのに偶然出演者陣がとても豪華なことになっておりまして、事務所内でも「現代音楽」と言えばの榎本玲奈さんがバルトークを、「ロシア音楽」と言えばの佐々木理之さんがグリエール(ソ連の作曲家と言われるが現ウクライナのキーウ出身)を演奏します。他3名は先日のオーディションで事務所に入った方々のようで、僕も聴くのが楽しみです。
実は夏の間はしばらく事務所関係のコンサートが続きます。8/20にはブラームスの《ホルン三重奏曲》も抜粋で演奏しますので、そちらもよろしくお願いします。
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