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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【楽譜販売】カイザー『クロイソス』より《愛の神よ、あなたは何をなさるおつもり?》ピアノ伴奏編曲


 BOOTHに新しい楽譜を追加致しました!




 ドイツの作曲家ラインハルト・カイザー(Reinhard Keiser, 1674-1739)の最高傑作と言われるオペラ『クロイソス』から、ヒロインであるエルミーラのアリア《愛の神よ、あなたは何をなさるおつもり?》です。


 このアリアの邦題は"超意訳"でして、原題は《Liebe, sag', was fängst du an?》といいます。直訳すると「愛よ、言いなさい、何をしようとしているの?」という感じでしょうか。厳密には「愛(の概念)よ」みたいな感じなのかもしれませんが、ムードに欠けるので「愛の神」にしました。そういう訳もあったし。



 

 さて、まず皆様が気になるのはこのカイザーという作曲家のことでしょう。「カイザー」という名前だけ聞くと、恐らく一般的にはヴァイオリンのエチュードの著者が思い浮かぶかもしれませんが、あちらはハインリヒ・エルンスト・カイザー(Heinrich Ernst Kayser, 1815-1888)という別のカイザーさんです。綴りも違うのですけれども、カタカナに直すとわかりませんね。


 オラトリオ『メサイア』で有名なヘンデル(Georg Friedrich Handel, 1685-1759)はご存じかと思われます。若きヘンデルはハンブルクの劇場でヴァイオリン奏者や通奏低音奏者を務めていたのですが、その時の音楽監督がカイザーでした。ヘンデルはカイザーの音楽を演奏していたわけで、音楽的な影響も受けていたと考えられます。


 今やヘンデルの名は不動のものとなり、対してカイザーの名は「ヴァイオリンの人? え、違う?」という扱いになっております。要するに殆ど忘れられております。じゃあそういうレベルの人だったんじゃない?と思われるかもしれませんが、少し振り返ってみてください。バロック時代のドイツのオペラ自体、認知度が地の底なのです。当時イタリア・オペラ人気に圧されてしまい、ドイツ・オペラの名誉挽回はほぼモーツァルトの出現を待たねばならなかったわけです。


 白状すれば、僕も数年前まで知りませんでした。少なくとも大学の西洋音楽史でカイザーの名前は出てきていません。昭和音大がイタリア・オペラ系の大学だからという事情からではないはずです。もしかするとオペラ史の授業では登場したのかもしれませんが、僕はオペラ史を履修しなかったのでわかりません。ともあれ、ルネ・ヤーコプス指揮のベルリン古楽アカデミーによる3枚組CDを手に入れ、序曲を聴き始めて5秒で「こいつは凄いオペラだぞ!?」といきなり感動し、いつか抜粋で編曲しようと決意を固めたものでした。



 フィレンツェから始まったオペラを知って、様々な国や地域がオペラを採り入れようと工夫をしていきました。その面白さを現在の僕たちは享受できていますが、どうしてもそれらは限られた一部のものになってしまっています。僕の行った編曲によって、ひとまずはバロック時代のドイツ・オペラの一つの入り口になってくれたらよいなと思います。


 …とか言いつつ、このアリアの演奏難度は正直結構高いです。A-B-A'という形式、所謂ダ・カーポ・アリアであるわけですが、この中間部Bの部分が当時の基準での超絶技巧です。『メサイア』のソリストもちょっと仰け反るかもしれませんが、達者なコロラトゥーラの皆様はむしろ好物かもしれません。


 そもそもが腕に自信のあるソプラノ歌手の挑戦をお待ちしているような曲ですけれども、メロディが素敵な曲であることには変わりありませんから、例えばヴァイオリンやフルートなんかで歌のパートを弾いて演奏してしまうのもありだと個人的には思います。ピアノ伴奏編曲しましたからヴァイオリンやフルートの音も埋没しないでしょう。管弦楽法に詳しくない僕が言っても説得力は乏しいでしょうが…


 販売サイトでは、カイザーのこと、時代背景解説や演奏の手引き(になるかどうかはわからない榎本自身の演奏実感)を書いたノートを楽譜とセットにしておきました。ご購入いただくと両方ダウンロードできます。そんなに分量書くつもりではなかったのですが、ノートは対訳込みで3ページ・字に及びました。編曲自体の方が確かに時間はかかりましたけれども、手持ちの資料をひっくり返してノートを書くのにもそれなりの時間がかかりました。大作とは言えないまでも、我ながら自信の持てる成果物にはなっていると思います。


 あらためまして、世のソプラノ歌手あるいは高音楽器奏者の皆様は、ご興味が湧きましたら楽譜をお買い求めいただきまして、どんどん演奏していただけたら嬉しいです。別料金ですがピアノ伴奏も僕が引き受けます。どうぞよろしくお願いします。



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