色々あって開設したBOOTHに陳列している商品を記事で紹介していきたいと思います。BOOTHの説明文に載せるには長い事情もありますし、しかしそのエピソードがあった方がより面白可笑しいというのも事実なので、こちらに書いておきたいと思う次第です。
さて、「《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第1楽章のヴィオラ抜きピアノ入り」などというまるで料理の注文のような言い方をしたわけですが、そのような編成をわざわざ書こうと自ら思い立ったわけではなく、やむを得ない事情によってこのアレンジを書くことになったのでした。
直接のきっかけは、2019年に友人の音楽ユニットが主催するコンサートに出演したことです。メインプログラムはバッハの《お喋りは止めて、お静かに(コーヒー・カンタータ)》であり、その演奏には僕は参加しなかったのですけれども、練習ピアニストと、コンサート前半のガラコンサート枠でピアノソロやアンサンブルを演奏したのでした。
それは知名度の高い作品を細々と集めたプログラムだったのですが、その中にモーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第1楽章があったのでした。確かに第1楽章だけ知名度が高いわけですから、その選択には納得しました。
ところが、集められた演奏メンバーの中にはヴィオラがいなかったのです。そして僕には《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》のピアノソロ編曲(指の都合は考えられていないもの)が渡されまして、「ヴィオラのパートを補って弾いてほしい」というミッションが下されました。榎本が「ヴィオラパートをピアノが弾くなんてのは代替になってないぞ!」と即時に思ったことはご想像できるでしょう。
かくしてコンサートの準備期間中であった2018年に、「ヴィオラ抜き・ピアノ入り」、すなわち 2ヴァイオリン+チェロ+ピアノというピアノ四重奏編成で演奏できるように書き直された《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》が産み落とされたわけであります。弦楽合奏でさえなく、より個人の音が聴こえるような編成ですから、全てのパートに主旋律が行き渡るように配慮しました。原曲ではひたすらベースを弾き続けているチェロにさえ、主旋律を弾く箇所を作りました。正直な話、モーツァルトらしいサウンドではなくなっていると思います。
初演は会場の都合上ピアノ(フルコン)の音量が圧勝するという事態に終わったのですが、むしろこの編曲はこぢんまりとした会場で演奏する方が適していると思います。それこそ、ピアノが置かれているカフェやバーに弦楽器を持ち込んで演奏するくらいがちょうどよいでしょう。一方で大きな会場で演奏するならば、弦楽器の数を増やしてみるという策もあります。ショパンのピアノ協奏曲だって後には弦楽四重奏の伴奏で演奏されていたらしいですが、現代の強靭な馬力をもつピアノで演奏するには弦楽四重奏だと音量も足りないでしょうし、そのような場合と同じことです。
第2楽章から先を編曲しないのかと問われれば、現時点では書く予定はありません。よほどリクエストが多く、自分の収益が見込めるようならば着手しないこともありませんが、全楽章やる気概があるなら弦楽合奏で人数を集めてオリジナルをやらんかい!とも思うので、ひとまず様子見といったところですね。
気になるお値段はスコア+各パート譜で合計1,200円となっております。それは確かに演奏するメンバー全員がそれぞれ買っていただけるならば僕には相応の収益が入るわけですが、最低4人で演奏すると考えて一人300円負担してくれるくらいでいいか…という判断でこの価格に設定してあります。ちなみにこの編成の編曲はimslpにはありませんでした。
というわけで、「ヴィオラ抜き、ピアノ入り」もとい「小室内楽用」の《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第1楽章、お買い上げいただけたら幸いです。どうぞよろしくお願いします。
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