本日はこちらのコンサート、『名曲!迷曲? 土居真也・大内暢仁 ピアノデュオコンサート』を聴いてきました!
土居真也さんははるばる福岡からいらっしゃったようです。
いわゆる知名度の高い作品とそうでない作品を交互に並べたプログラムでした。普段の大内さんの領分を知っているので「有名じゃない方の曲目は大内さんの担当だろうな」などということを予め予想していたわけですが。
ただ、今回の演奏会は単に曲目を並べるだけでなく、その関連性を丁寧に補足することで構成を作っていたことが印象的でした。
フォーレの《月の光》とドビュッシーの《ベルガマスク組曲》のプレリュードに類似したメロディが登場することを聴き手に気付かせるコンサートはこれまでになかなか見なかったかもしれません。それもそのはず、フォーレの方は歌曲ですからピアノだけのコンサートでは普段演奏されませんし、かと言って歌手を用意したコンサートで《ベルガマスク組曲》を演奏するのも歌手を待たせてしまうので結局プログラミングしづらいものです。大内さんの手によってフォーレ《月の光》ピアノソロ版が作られたからこそ実現された例であったでしょう。
土居さんの演奏は初めて聴きましたが、特段ブラームスあたりに愛着があるように感じるものでした。ドビュッシーの華やかな音楽も弾いていらっしゃいましたが、個人的に気に入ったのはやはりブラームスやショパンの味わい深い方の音楽です。今回は特に有名なものをピックアップしていましたが、ブラームスの他の小品やショパンの他のノクターンにも興味が湧きました。
誰もが知るパッヘルベルの《カノン》のオスティナートに言及しておくことによって、パッヘルベルの《シャコンヌ》やビーバーの《パッサカリア》に向かう姿勢を準備したのは非常に良かった点であると思います。「繰り返される音型の上に変奏が展開されていく」という受け止め方によって、知らなかった音楽でも楽しめた方は少なくないのではないでしょうか。
パッヘルベルの《カノン》があったからでしょうか、ブットシュテットの《フーガ》もさほど身構えずに受け止めることができたような気がします。このブットシュテットのフーガは同音連打が激しいフーガでして、何の準備も無く聴けばフーガ云々の前にドン引きするくらいの感情が来る代物ですが、今回は同音連打という視点から離れてフーガ視点で聴くことができました。
僕自身が基本的にはテーマありきでコンサートプログラムを構成する人間なので、「お互いのレパートリーを持ち寄ってその中で考える」というやり方を最近は殆ど採らなくなりました。確かにプログラムのテーマから外れる曲目が出る可能性は高まりますが、たまにはそのようにして構成を仕立て上げていく方法を採ってもよいのかもしれません。違うものの中に関連事項を発見するという考え方ですね。
コンサートとしてやる内容よりは、演奏家自身の気質を問われるやり方になる…したがって売り方もそれに準ずることになると考えられます。どんな企画かはさておいて、「この演奏家とこの演奏家をぶつけたらどんなコンサートが起きるだろう?」という楽しみ方がメインになってくるわけですね。
今回の土居さんと大内さんの企画は物理的距離を超えた貴重なコラボであったということでしょう。このような形の企画も、それはそれで面白いのかもしれないと考えを改めました。
Comments