公から見た僕の肩書きは『ピアニスト』だと思います。一番長く続けてきたのはピアノですし、大学と大学院をピアノ専攻で出ています。自主企画のピアノリサイタルも何度かやりましたし、合唱を主として伴奏の仕事もジャンル問わず引き受けています。
ピアノの次に仕事だと言えるのは作曲や編曲でしょう。一応は作曲編曲でお金をもらったこともあります。つい先日は新作歌曲《朝顔》(詩:川上智子)の初演もしました。今は俳優・演出家である三輪えり花先生のシリーズ企画『シェイクスピア遊び語り』の第16弾《テンペスト》の音楽を書いています。ちなみに地味にDTMもできます。
そしてここ数ヶ月はコロナの影響の下、オンラインで音楽理論やソルフェージュを教えることで生計を立てようとしているところです(随時生徒受付中)。そもそも大学院時代から学部や私的な場でも和声法を教えていましたし、3月で退職した高校非常勤講師の経験もなんだかんだで役に立っています。
最近はありがたくも音楽家として認知していただける機会が増えて参りましたが、おそらく皆様の『榎本智史』のイメージは専らこの3つだと思われます。
…が、実はこの新型コロナですっかり息を潜めてしまった活動がありまして。何を隠そう、僕は合唱団で歌っています。伴奏者兼任です。伴奏を頼まれるいくつかの合唱団でも悉く「榎本はピアノ弾くだけじゃなくて歌も歌う」と紹介されたり既にバレていたりして、アカペラのエキストラ参加なんかも経験しました。
高校1年生から合唱を始めまして、歌うのはとても好きなのです。特に専門的に習ったというわけでもないので仕事にはあまりするつもりもなく(仮歌や合唱エキストラなど頼まれれば引き受けますが)、合唱を通して学んだ音楽に関することを仕事に活かしている…というような、趣味とも仕事とも言い切れない立ち位置の活動なのです。
コロナ禍において、生演奏をお客さんに聴いていただくという機会はめっきり無くなってしまいました。あっても私的なものです。世間には逞しく生配信で収益を上げている音楽家もいらっしゃいますが、我が家はそのような環境を到底整えられませんし、そのようなツールも持ち合わせておりません。YouTubeを完全放置だったり配信ツールに見向きもしなかったりというままこの状況に突入したことがそもそも誤算だったのですが、とにかく作品発表や演奏発表の場を新たな方法で設ける必要が出てきたのは確かでしょう。
ならば僕は生配信よりも、修正や編集ありきで音楽作品や演奏作品を作って発表していく方針を取ろうと思います。リモート合唱なんかも賑わってきたところですし、案外このような場での伴奏音源提供もできるかもしれませんから。
というわけで、他の市と比べて届くのが遅すぎる給付金を恨みつつも、先に貯金を切り崩し、比較的安価ながらも性能は充分であろうオーディオインターフェースとマイクとヘッドフォンという録音機材一式を購入。使い方に慣れるべく、小ネタや先述のシェイクスピア公演の仮歌を録ってみることにしました。
ここで一つの欲求が湧き上がりました。
これを使って合唱をやってみたい。
しかしヘタレ榎本、仲間を募るだけの勇気は出ず、またそのノウハウもわからない。機材環境が揃っている人ばかりでもない。そして何より、「既に鳴っている音を聴いてハモりに行く」という体感を自分の納得いくまで試みたい。
そう思うと、やはり自分だけの多重録音を試みることが最も理想に近いような気がしました。心が決まったので男声合唱の作品を漁り、これまでに歌いたいと思いながらも機会を逃し続けてきて、ようやく3月に伴奏を担当することになったのにそれもコロナで延期となった、信長貴富さんの代表作の一つである《ヒスイ》を歌うことにしました。
合唱の譜読みには割と自信があります。あとは、なにせ何度も聴いてきた曲(ただし混声版)ですから、どのパートが何をやるかもだいたいわかるだろうというイメージもありました。これは自慢ですが、主音であるG音を鳴らした以外はピアノ等の楽器を使わずに全パート音取りしました。
これが歌ってみるとなかなかキツい!!!
もう5ヶ月も合唱から離れていますし、自粛引きこもり生活が長いせいで声が酷く衰えているのです。上も下も出なくなっています。これは非常によろしくない…と思い、発声練習はしつつじわじわと録音に取り組みましたが、やはり完全復活までは持っていけていないのが現実です。しかも声のせいで音程が不安定になる。わかっていても歌えていない。なかなか精神的にも苦しいものでした。結局、1つのパートにつき3トラック以上歌って重ねることにより、どうにか音痴の中和を図りました。
反省。
発声練習は日々やりましょう。あとポップガードも買いましょう。
しかしセルフとは言え、久しぶりにハモるという体験ができたのは嬉しいことでした。今後また何かしら歌ってアップするかもしれません。
ついでに、仮歌音源や伴奏音源の提供にも筋道を付けることができたと思います。そういったご依頼があれば、なんなりとお申し付けください。そうそう、歌の音取り方法の相談やレッスンにつきましても随時受け付けております。自分のパートだけでなく他のパートも取れるようになると多重録音も捗るかもしれませんよ(この苦行を好んでやる人がいるのかはさておき)
まとめ。よい経験になりました。
Comments