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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【音楽史】2025年にメモリアルイヤーを迎える作曲家

更新日:2 日前


 年が変わりましたが喪中ですので新年のご挨拶は差し控えさせていただきます。今年もどうぞよろしくお願いします。


 普段から音楽関連のメモリアルイヤーを気にしながら選曲をしている節がありまして、企画の度に一々調べたりもしていたのですが、年始の時点で一通り調べて手元にまとめておけば後々引っ張り出し易いでしょうし、ブログの形で共有すれば興味喚起にもなるだろう…ということで、ちょっとまとめてみたいと思います。



 

パレストリーナ

Giovanni Pierluigi da Palestrina

1525?-1594

生誕500年(推定)


 「ジョヴァンニ・ピエルルイジ」が名、姓は不明、「パレストリーナ」が出身地です。宗教改革が起こり、批判を受けたカトリックの内部改革が行われた時代に活動しました。トレント公会議において決められた教会音楽の在り方への要請に応えるようなポリフォニーを創作しました。《教皇マルチェルスのミサ》作曲の盛った逸話も残されております。鍵盤楽器には縁遠いものの、合唱で触れられる機会があれば良いですね。



ヨハン・シュトラウスII世

Johann Straus II

1825-1899

生誕200年


 言わずと知れたワルツ王。オペレッタ『こうもり』の序曲は年がら年中どこかしらで演奏されている印象があります。やはり鍵盤楽器には元々あまり縁が無いなと思いつつ、編曲には恵まれているでしょうからちゃっかり演奏する機会もあるかもしれませんね。それこそ新ウィーン楽派が編曲したものもありますし。余力があって気が向いたら編曲も作ってみたいですね。



ラヴェル

Maurice Ravel

1875-1937

生誕150年


 もうほぼ説明しなくていいくらいかもしれない大人気作曲家。周りの演奏家たちがこぞって弾きますし、スペシャリストも既に複数いるのだから「自分が弾く必要も無いのでは…?」とも思いましたが、世間では "印象主義" と呼ばれてそのようにばかり分類解釈されているという点には疑問を感じるので、この機会に敢えて見直してみる意義もありそうです。ガッツリと古典主義者だと思うんだよな。今年最初の公開の本番では《ソナチネ》を弾きます。



メラルティン

Errki Melartin

1875-1937

生誕150年


 フィンランドの作曲家で、ラヴェルと生没年が同じです。後期ロマン派の雰囲気は残しつつも、神秘主義にも影響を受けた調性はほぼ停止の一歩手前まで進みます。エジプトやインドへ旅をしたとか、数秘術に興味を持っていたという話も聞きます。音の使い方が後世のラウタヴァーラあたりまで予感させているのは面白いと感じますね。《悲しみの園》以外の曲集もまとまった楽譜が手に入ればよいのですが…



グリエール

Reinhold Gliere

1875-1956

生誕150年


 ウクライナ・キーウ生まれの作曲家です。僕が参加したCDアルバム『ウクライナのピアノ作品集』にも小品が複数入っていましたし、日本国内でも比較的楽譜は手に入りやすいかもしれません。あまりきちんと取り組んだことも無い作曲家なので、小品をいくつかやってみようかなとも思うところですね。ピアノ曲以外にも管弦楽曲やバレエ音楽など知名度を獲得している創作範囲は広いと思います。



クライスラー

Fritz Kreisler

1875-1962

生誕150年


 当のクライスラーはヴァイオリニストですが、どうやらピアノも相当に上手かったという話でして、数年前に弾いた時は意外なピアノパートの難しさに苦労したものです。ラフマニノフによるピアノ独奏編曲もあるにはありますが、個人的にはヴァイオリンとピアノのアンサンブルで演奏したいものです。この年代の生まれではあるものの、長生きしている分だけ著作権(戦時加算あり)に注意せねばならないかもしれません。僕も厳密には調べていませんが…



コールリッジ=テイラー

Samuel Coleridge-Taylor

1875-1912

生誕150年


 シエラレオネ出身のクリオを父にもつ混血イギリス人の作曲家・指揮者で、後に「黒いマーラー」と呼ばれて名を馳せました。本来の姓は「テイラー」だけですが、本人もミドルネームと姓を繋げて活動名として扱っていたようです。後年はアフリカ系の音楽に興味をもち、作品に反映させていました。若くして亡くなった後も第二次大戦前は評価されていたようで、再評価が待たれるところですね。



芥川也寸志

1925-1989

生誕100年


 なるほど、確かに去年は團伊玖磨が生誕100年だったのだから順番に来るのは納得の行くところです。しかし團と比べると声楽作品が演奏される頻度は相対的に少ないような気がしないでもないですね。《絃楽のためのトリプティーク》だけは時々演奏されているのを見かけますが… ヴァイオリンとピアノのための《譚詩曲》や合唱曲《お天道様・ねこ・プラタナス・ぼく》あたりの作品が最近は気になるところです。



ベリオ

1925-2003

Luciano Berio

生誕100年


 《セクエンツァIV》と言えばコンテンポラリーのピアノ奏者にとっては憧れの一曲でしょう。今から読み初めても年内に仕上がる気がしませんけどね…



ブーレーズ

1925-2016

Pierre Boulez

生誕100年


 芥川也寸志が60代で亡くなったのに対してブーレーズが90歳まで生きたものですから、この二人を見比べてまさか同い年だったとは思ってもいなかったので改めて驚きました。ブーレーズは個人的に未だに味わい方がよくわかっていない作曲家の一人でして、せめて《ノタシオン》はいずれ弾きたいと思います。生誕100年が経ってもこの方のソナタは厳つくないですかね。



テオドラキス

1925-2021

Mikis Theodorakis

生誕100年


 左派の政治家として国務大臣も務めたことがある現代ギリシャの作曲家。亡くなったのがごく最近でした。現代とは言いつつも作風はあまり前衛的であるようには感じられず、むしろ明快な民族主義を前面に打ち出したものだと思います。ギリシャものは普段のクラシックでもあまり触れてきていないので、個人的には空気感を今のところ掴めていません…


 

 どうしても榎本の興味のあるところに偏りがちで「この作曲家が入っていないぞ!」ということが起きている点についてはご容赦いただきたいと思います。没年のメモリアルも気にしていないわけではなく、むしろ選曲に絡めやすい点もあるのですが、祝う気になるのは没年より生年の方だな!などというこれまた榎本の独断によるものです。


 既に世間に浸透して知名度も高い作曲家、反対に音楽家にさえ殆ど気に留められない作曲家、両者共に「メモリアルイヤー」を口実に興味が向くようであればコンサートのラインナップにも幅が出て面白くなると思います。



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