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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【演奏告知】私的演奏協会Vol.3:極小様式【2024.7.15】

更新日:6月1日


2024年7月15日(月祝)

① 13:45開場 14:00開始

② 15:15開場 15:30開始

『私的演奏協会 Vol.3』


入場無料(投げ銭歓迎)

定員各回15席


会場

空音舎

東京都大田区南六郷2-5-10

サンアイランド102


曲目

ハウアー《余韻研究》Op.16

シェーンベルク《6つのピアノ小品》Op.19

ほか関連楽曲


演奏・解説

榎本智史


予約申込

メール

または当ホームページCONTACTよりメッセージ送信



 

 本番が詰まりに詰まっていることもあって、解説付きリハーサル会『私的演奏協会』は5月・6月とお休みをいただきまして、次回は7月の開催となりました。なぜか7月は突然空きだらけなのですよね…もう少し仕事が分散してほしいところなのですが…


 そんな手元の仕事事情はさておきまして、『私的演奏協会』第3弾はハウアーとシェーンベルクの小品をそれぞれ取り上げます。ハウアーの5曲から成る《余韻研究》、そしてシェーンベルクの《6つのピアノ小品》は、共に殆ど1~2分ほどの非常に短い曲が集まった作品となっています。


 当企画の第1弾・シェーンベルク《3つのピアノ曲》ならびに第2弾・ベルク《ピアノソナタ》では、作品のもつ構成や形式が重要な役割を果たしていました。音楽の展開がストーリー的解釈を許容していたわけですね。しかしこの度取り扱う2つの作品には、形式と言える形式がありません。刹那的に発生する音楽を捉えようとすることが一つのカギになると思います。


 

 シェーンベルクの門下生が「新ウィーン楽派」と呼ばれたわけですが、ハウアー(Josef Matthias Hauer, 1883-1959)は新ウィーン楽派と一時期交流を持ちつつも、シェーンベルクの門下生ではありませんでした。そして、「シェーンベルクに先んじて十二音による作曲法を考案した作曲家」として名前が知られています。ただ、後の創作を辿ってみるとハウアーとシェーンベルクそれぞれが目指していた「十二音による作曲法」には大きな差があったこともわかるのですが…


 今回取り上げる2作品は、二人とも「十二音による作曲法」に到達する前の作品です。やはりこの段階でも「目指している音楽は決して同じではないな?」と思われるかもしれません。しかし、それぞれが独自の美学をもって新たな音楽の響きを切り拓いていったという点では、一時期協力関係にあったことも頷けるのではないでしょうか。


 ハウアー《余韻研究》Op.16は、まさに新たなハーモニーの探求です。原語で書くと "Nachklangstudien" という題名でして、《響きの習作》などと訳されることもあるようですが、高橋悠治さんが《余韻研究》と訳して弾いていらっしゃったので、僕もこの訳で通させていただいております。ペダルを踏みっぱなしにして、まるで色彩が交じっていくかのように音色が交じっていく様を描きます。その中では疑似的な複調やクラスターも聴こえてくることでしょう。調性を超えた響きの入門曲として非常に効果的な音楽となっております。


 

 シェーンベルクの《6つのピアノ小品》Op.19の方が、ハウアーよりもさらに鋭利な響きをもっていると言えるでしょうか。必要最少限に切り詰められた旋律や和音が刹那的に現れては消え、聴き手の耳にその痕跡を残していきます。《3つのピアノ曲》Op.11と比べてその抽象度は極端に高められ、まるで楽譜に記録された即興のようなイメージをもっていると言えるでしょう。


 ちなみにこの作品は1曲目から5曲目までが先んじて書かれており、6曲目だけが後から追加されました。空虚と寂寥に満ちた6曲目が書かれるきっかけになったであろう出来事があったのです。それこそがマーラーの死でした。マーラーが亡くなった時点で初演されていなかった《交響曲第9番》がこの《6つのピアノ小品》第6曲にエコーしているのではないかと想像されたりもします。


 

 ハウアー《余韻研究》とシェーンベルク《6つのピアノ小品》は、技術面の演奏難度自体はそれほど高くありません。二人ともピアノが達者ではなかったのか、正直なところ奏法面での無茶が多少書かれているのは相変わらずであるものの、二人の他のピアノ作品ほど無茶な要求はしていません。書かれている音を拾って鳴らすだけであれば小学生くらいの子供でも弾けると思います。


 難しいところはと言えば、その音遣いによる音楽の力の流れを掴むことでしょう。どのように音楽を捉え、どのように表現するかという点において、参考になる他の例が乏しく、もはやハウアーとシェーンベルクの作品の中でさえ特殊と言えるでしょう。


 そんな2作品ですが、個人的には全ての音楽家が必修すべき作品であるとさえ考えています。彼らの他の曲まで全部やる必要はありませんから、この2作品だけは一度弾いておかねばならないとまで思います。「無調」と聞くと何やらクラシックが複雑進化したものと思われるかもしれませんし、作曲者自身もそのつもりで書いたかもしれませんが、結果的に出てきた音楽はむしろ人間にとって原始的な音楽への向き合い方を反映したものになっているように感じます。


 とうとう私的演奏協会も3回目。普段聴き馴れていない音楽を聴くことによって耳を拓くだけでなく、今回はご自身がシェーンベルクやハウアーの演奏に挑戦するきっかけにもしていただけたら幸いです。


 ご予約は上記概要のメールアドレスに予約の旨のメールを送るか、あるいは当ホームページのCONTACTページのフォームに必要事項を書き込んで送信していただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

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